神速を尊び画餅を食う。

 神速を尊んだのは郭嘉で、絵に書いた餅にブチ切れたのは曹叡。ちなみに拙速を聞いたのが孫武
 先日王座戦の第2局、豊島羽生戦もありましたが、ひっかかるところもなくさらっと羽生勝ちで決着してて、個人的に現在関心度の低い角換わり腰掛け銀の将棋でもありましたので、ここでは取り上げません。トッププロ同士の角換わりで後手番がさらっと勝つて本当はわりととんでもないことな気もしますが、羽生なので誰も驚かないっていう。

千田翔太(3-0)-△小林健二(1-2)…▲千田勝ち

 若手ながら力戦乱戦どんと来いの森ノブ門下の礼儀正しい荒くれ者・チダショーと、このところ序盤の変態ぶりにますます磨きがかかってる感があるダンディー・コバケン。個人的にC級2組の中でも注目してる2人による楽しみな対戦。
 相矢倉の出だしでしたが、この2人では当然のように王道の24手組などにはなりません。なったら逆にびっくりします。まず後手小林が△6四歩と変化。右四間か米長流か右玉か、あるいは未知なる変態戦法か、と先手千田も警戒して▲7七銀を保留しつつ先手からの急戦も視野に入れた駒組み。荒くれ者と変態のにらみ合いです。
 後手の構想は腰掛け銀からの四手角+右四間。四手角は何事もなく組み上げれば有力。ただ昭和までの序盤のんのんびよりな将棋では許されても、世知辛い現代将棋ではなかなか何事もなくとはいきません。序盤で▲2五歩△3三角の交換入っての三手角ならまだしも。
 ということで、のんびり理想型など許さんと先手は金矢倉の築城も玉の入城もそこそこに37手目にして▲4六歩と開戦。この時点で後手の主力は4一玉、5一角、8二飛という配置。四手角も右四間も玉の囲いも、何一つ出来上がってません。
 その結果、四手角がセットできてないので先手の攻めを牽制することもできないわ、右四間の構えも遅れてるので攻め合いにもいけないわ、玉の位置が半端なせいで継ぎ歩からの十字飛車は炸裂するわ。どうしようもありません。なんとか穴を塞ごうと後手は玉自身さえも現場に出て奔走しましたが、泥縄式の補修工事現場に次から次へと千田の歩の手裏剣が突き刺さってあえなく決壊してしまいました。千田無傷の4連勝でトップ快走。