B級2組の展望

 昨日、1回戦が行われた順位戦B級2組。
 このクラスはアラフォー以上が面子の8割を占めるおやじ天国。それも最新型に目もくれず独自路線を突っ走るような、一癖あるタイプが多いです。延々とネチネチねじり合いしてるような、非常に脂ぎったこってりとした対局を楽しめるクラスです。対局結果をざっと見ながら、昇級争いの展望なぞ。

 最も早く終わったのがこの対局。早くといっても22時過ぎなんですが。うーん、さすがこってりクラス。横歩取りからのねじり合いとなった将棋は、63手目に中川玉の両サイドを金が、上下を角飛が固めるインペリアルクロスが出現。実際には中川の飛車が成駒の責めから逃げてきたことで出来上がった単なる玉飛角接近の悪形なんですが。ただこれが下段飛車が妙に受けに効いてて案外攻めづらい。おそるべしインペリアルクロス。手こずってるうちに中川玉はすたこら安全地帯に逃げ、角が好防に駆け回り、気づいたら中川勝ちになってました。

 糸谷得意の一手損角換わりに、高橋は端棒銀で対抗。△1三歩の受けに▲1二歩の垂らしでなく、▲1三同香成と突っ込んで端を破る特攻策。私も一手損角換わり指しますが、4二の飛が全く活用できてないだけにこの突進はかなり嫌です。しかし、そこはこの戦法のスペシャリストの糸谷、相手の玉頭の7筋に強烈な反撃。もらった駒をガシガシ投入して7七の地点を集中砲火、一気に潰してしまいました。ふーむ、勉強になります。飛車を4二で隠居させたままでの圧勝。

 将棋も振る舞いも独自路線を突っ走る窪田の△ノーマル四間に、急戦の大家・青野が▲棒銀で真っ向勝負。窪田の角切りからの猛攻をギリギリのところで青野が凌ぐ展開。なんとか一息つけたか、とホッとしかけたところで△5七桂の痛打が炸裂し、窪田勝ち。受けて勝つって難しい。

  • ▲畠山成幸-△安用寺孝功…安用寺勝ち

 △ゴキ中の銀対抗型。お互い竜を作っての終盤、後手は自玉は穴熊の堅陣でまだ安泰なものの、攻め駒は竜と持ち駒金銀の3枚のみ。先手の角冠の四枚美濃をどうやって攻めるか、というところで、じっとそっぽの歩を拾う△3五歩。こう指すもんですかあ。同じ攻め駒補充するのでも△1九竜と香拾いにいくのでは▲4九歩と利きを止められるからマズいということなんでしょう。指されれば意味は分かりますけど、でも私なら絶対香取りにいきたくなる。あとは拾った歩を垂らして四枚目の攻め駒を作り、自玉を顧みずにガシガシと食いついて一手勝ちという穴熊の勝ちパターン。

 相掛かりラブの野月の初手▲2六歩を森下も△8四歩と受けて立ち、相掛かりへ。野月が角と金銀の二枚替えの駒損ながら攻め込むも、森下の物量受けの前に沈黙。金駒六枚のクロガネの城を築き上げたところに、さらに7枚目の金駒を投入して馬を取りに行くという森下将棋で完勝。駒得は正義。

 こちらも相掛かり愛好家の北浜。こちらは井上が2手目△3四歩と横歩取りに誘導しようとしましたが、北浜は横歩を取らずに飛車を引いて相掛かり風に。後手は銀を腰掛け銀から6五〜7四へとスルスル進出。これは裏鎖鎌銀とでも言うんでしょうか。先手の銀も腰掛けてればガッチャン銀なんですが。
 対して、先手は▲8六歩とタダのところへ歩を突き出す意表の受け。△同飛と取らせて角交換から▲8八歩と低く受けて攻め足を止めておいて、あとは銀の進出に手をかけていた後手陣のスキ突いての馬作りからボチボチと。井上も苦心の手順で抵抗するも、そのまま押し切ってしまいました。

  • 島朗-△豊川孝弘…豊川勝ち

 ここは角換わり腰掛け銀に。△4三歩型に見られる▲4五銀とぶつける仕掛けに対して、△5五銀と銀をすれ違っておいて、3四の歩は取られても歩越し銀ではたいした攻めもナイチンゲールという大局観。あとは十分な体勢から強烈な攻めを浴びせてマンモス快勝。

 ▲中飛車△向飛車の相振り。先手が穴熊に潜ったところに猛攻仕掛けるも、桂香が参加しない攻めだったためかもう一押しが足りず。受ける青春の勝ち。だんだん感想が雑になってきた。

  • 先崎学-△田村康介…田村勝ち

 一手損角換わりからの相腰掛け銀。将棋ボクサーvsマッハパンチのお互い強気の殴り合い。先手がTKO寸前まで追い込むも、そこから堅く勝ちにいこうとガード固めてると死角から飛んできたブーメランフックで脳を揺らされ、気づいたら大の字に。どこかでもう一度、殴り合いにいければ良かったんでしょうが、そうは簡単には。

  • ▲杉本昌隆-△阿部隆…阿部勝ち

 生粋の振飛車党の杉本ですが、この日は3手目▲2六歩から横歩取りへ。振飛車党の振飛車離れ。先日のB1▲佐藤天彦△畠山鎮戦と同じ、早々の飛車ぶつけに応じて飛車交換から先手が8二に竜作る将棋に。先手は竜できてるのに対し、後手は角手放してしまってるわりに具体的な戦果がないので、先手指しやすいのかなと思いましたが。阿部は、うまいこと玉を固めながらじっくりと陣形整えていくこってりとした指し回しでリード。杉本も振飛車党としてはこってり派なんですが、飛を手持ちにされて玉が囲いに収まることもままならないまま戦い続けるのはさすがに苦しかった模様。

  • 中田宏樹-△佐々木慎…佐々木勝ち

 △ゴキ中の銀対抗型。先手が二枚銀で中央制圧を狙うも、後手も二枚目の銀を出動させてがっちり対抗。玉を堅めようもない先手は、仕方なくという感じで端からちょっかい出すも、逆に反撃されて自分の端を破られる始末。最後は挟撃の寄せでゴキ中の完勝譜。

 △角交換振飛車に対し、先手は銀冠から地下鉄飛車を見せるという構想。地下鉄飛車は開通するまで手数かかるのでなかなか実現しないもんですが、対△角交換振飛車では序盤で手得できるので、かなり有力そうな作戦です。下段飛車好きとしてはこれはちょっと真似してみたい。
 地下鉄開通を見て、大介玉は端の脅威から早逃げ。それまでいまいち覇気のない指し回しだった鈴木ですが、勝機を見つけたかここから急に元気になり、手付かずの美濃囲いを捨ててひたこらと遁走。ただ、右辺は手薄なように見えて地下鉄飛車の利きが一段目にビシーッと通ってたため、入玉までにはかなりの犠牲を払うことに。結果、点数が足らなくなってしまい持将棋にも持ち込めず無念の投了。鈴木はここしばらく、序盤で冴えず途中から粘りにいくも結局押し切られる、という負け方が多い印象です。


 B2の予想ですが。B2は、ここ10期でC1からの昇級組がそのままストレート通過したのが6人と壁が低いクラス。昇級組の糸谷、佐々木はともに初戦良い勝ちっぷりだけに有力そう。苦しめの序盤から粘りに行くような将棋が多い糸谷ですが、ねちっこい寝技師揃いのB2でも勝ち切れるかどうか。初戦抜け番だった戸辺誠は、振飛車党の中でも切れ味に特化したタイプで、寝技に持ち込まれる前にスパッと一本取れる力あります。前期黒星を喫した佐藤天彦村山慈明は上に抜け、稲葉、糸谷とも当たらない今期はチャンス。
 ということで、私の予想。

 ころびフリビシャンが増える中も頑張っている振飛車党2人で。もっと上のクラスに振飛車党増えてもらわないとね。