消えない戦法

▲中井広恵-△藤田綾…中井勝ち

▲山根ことみ-△矢内理絵子…矢内勝ち

 今日は2局。本当はもう一局、上田初美-石本さくらアマの対局が組まれていたんですが、上田の体調不良による不戦敗とのこと。お大事に。
 2局とも居飛車党の実力者に振飛車党が角道を止めるクラシックスタイルで挑む形に。
 ▲中井△藤田戦は△ノーマル三間美濃に、当然のように先手は居飛車穴熊。正直この時点で後手が勝つのは相当大変という印象。先手は小刻みな角の転回によるジャブをペシペシ当てて少しずつリード。腰が入ったパンチではないんですが、確実にポイントを稼いでいきます。気づいたら先手だけ二歩手持ちにして、四枚穴熊まで出来上がってる始末。どうしてこうなるまで放っておいたんだというレベル。
 このままではジリ貧と後手が端攻めにワンチャン託して動いてきたところに、コツンとカウンタを合わせてノックダウン。盤石の試合運びで中井勝ち。捌ける気配すらなく投了図まで立ち尽くしたままの振飛車の飛車銀が哀愁を漂わせてます。
 ▲山根△矢内戦は、▲藤井システムに対し、そのままクマるのは危険と見てか△9二香ではなく△9二玉。これは自著の「矢内理絵子振り飛車破り」でも解説してる、矢内得意の端玉銀冠。本局では2三に銀立ってないので、正確には銀冠ではないですが。そこから居飛車が抑えこまれそうなところギリギリで捌ききり、いち早く相手玉への噛み付きに成功。振飛車も王様が銀冠の小部屋からさらに屋根裏まで逃げて粘ったんですが、いかんせん後手玉が堅くてどうしようもありませんでした。先手としては後手の端玉に対して上部に厚い銀冠だっただけに、端攻めをうまく絡められなかったのが敗因でしょうか。ということで、2局とも堅さに勝る居飛車がノーマル振飛車をやっつけるの巻。これ、何回目の再放送?

 余談ですが、あの矢内本以降(おそらく以前も)、女流棋士による定跡書、戦法書て一冊も出てませんね。端玉銀冠&4五歩早仕掛けなんて超マニアックな本出す冒険心もちあわせてるなら、色々出してもよさそうなもんですが。単独だと売上的に厳しすぎるというなら「とっておきの相穴熊」みたいなスタイルで男性棋士との共著でもいいですし。船戸陽子加藤一二三で「とっておきの雁木」とか、中澤沙耶アマと加來博洋アマで「なんでも右玉」とか出たら、絶対買います。