華々しさ時々泥沼

 今週行われた女流王座戦二次予選の対局をまとめて。

▲室田伊緒-△鈴木環那…△鈴木勝ち

 先手中飛車居飛車。角にヒモつけずに▲6八銀と上がった手に対し、甘えは許さんと△5四歩の反発、16手目にしていきなりの開戦。そこからも鞘を収めて駒組みに戻る道はいくつかあったんですが、全てスルーして全面戦争に突入する鈴木環那。△5四歩の一手前には△3三角と持久戦調の手を指してたんですが、そんなことはお構いなしです。
 捌きあったところでは駒効率の先手vs駒得の後手という構図で形勢は先手優勢。しかし、先手の寄せが効率悪く最終盤で逆転、鈴木勝ち。

  • MIM:△5四歩(16手目)…この歩を突くか、▲6八銀を許すか許さないかは性格によると思いますが、見てる方としてはこういう気合の入った手は好きです。手の善悪はともかく。

▲室谷由紀-△島井咲緒里…▲室谷勝ち

 先手三間対△向飛車の相振り。女流は相振り飛車の登場頻度が非常に高いのが特徴なんですが、今回の女流王座戦二次予選ではこれが初登場。
 後手の飛角桂の軽い攻めに対し、先手が高美濃から金を前線に繰り出して攻め駒を逆に責めていく展開。後手の攻めが切れそうで繋がって、でもやっぱり切れて先手勝ち。後手の銀の働かなさ加減が印象に残った一局。

  • MIM:△7一銀(144手目)…金無双ってやっぱクソだわ、と思わせる悲しい銀引き。横から攻められた時に8二の銀が壁にしかなってないという。

▲清水市代-△真田彩子…▲清水勝ち

 △ゴキゲン中飛車に▲3七銀。早々に△5四飛と浮く趣向を見せる後手。ここからどうするのかと思ったら、10手後には△5二飛と元の位置に戻ってました。何じゃそりゃそりゃ。この飛車の謎の屈伸運動で二手得した間に攻撃態勢を整えた先手が、思い切り良く仕掛け、一切の緩みなくそのまま一気に攻め潰してしまいました。割り打ちのキズ、浮いてる6四の歩、半端な位置にいる後手玉といった隙を見逃さずにことごとく咎めていくという、これぞ勝ち将棋鬼のごとし。後手は逆にダメな手しか指してないような気にさせられる将棋。挨拶なし即去りでもおかしくないくらい感想戦するの辛そうな一局になってしまいました。

  • MIM:▲7五桂(57手目)…飛車角両取り掛かってる場面で、格言通り逃げるべからずの桂打が決め手。さすが清水市代、緩みません。

▲西山朋佳…△久津知子…▲西山勝ち

 先手石田流対後手棒金。早々に後手が△4四歩と角道止めてるのが違和感ありますが、△3三銀と上がって角交換拒否する森内流棒金のアレンジと考えればなくはないですか。3三銀型より4四歩・4三銀型の方が手厚いんではという発想。
 一度浮いた飛車を引いて棒金の圧力をかわす先手に対し、後手も空振りした棒金を中央に寄せて活用。盤の真ん中でごちゃごちゃした戦いに。こういう接近戦は棒金ペースかと思いましたが、飛車取りに構わず桂を捨てる大技を炸裂させて先手が一瞬で駒を捌き切ることに成功。最後はズバッと15手詰を詰ませて先手勝ち。

  • MIM:▲6五桂(73手目)…抑えこみ図る後手の包囲網を一手で切り裂いた桂捨て。鮮やか。