ファンペルシーヨコヨコ

 先日、いつのまにか将棋日本シリーズが開幕してました。早指し棋戦ですが、テレビ中継があるNHK杯、アマも参加する朝日杯といったところに比べて、大仰な名前のわりにどうにも存在感薄い棋戦。また対局の始まる時間が日曜午後の中途半端な時間からで、しかも持ち時間10分という超早指し戦なので気づくと終わってる率が非常に高いです。現在は2年連続、決勝で久保利明羽生善治を破っての二連覇中。そう言われても「…ああ、そうだったっけ?」感が否めない。

行方尚史-△谷川浩司…▲行方勝ち

 △角交換振り飛車から先手が▲2四歩と打つ、先日の順位戦▲森内俊之-△渡辺明戦と同じ進行。渡辺は飛車を2筋に回しての逆襲狙いでしたが、谷川は飛車を4筋に置いて先手の攻めを受け止める構え。
 この将棋は歩を取るために2三に家出した金の処遇をどうするかがポイント。森内-渡辺戦では渡辺が金を自宅に帰そうとしたところに森内の馬が襲いかかって先手ペースになりました。「襲いかかる森内の馬」て図らずも卑猥な表現となってしまいましたが。本局の谷川は自陣角と飛車の両親が家出先に駆けつけて手厚く保護する姿勢。結果、2三金・1二角・2二飛という凝り形ってレベルじゃないことになってしまいましたが、さらに美濃の金も離れ、底ポーンも打ってと耐えに耐えて。

 なんともすごい陣形に。一般に駒得した場合は流れを落ち着かせるのが良いとされますが、序盤での一歩得を活かそうと思ったらここまで淀んだ流れにしないといけないということでしょうか。しかしこの後手の格好はいかにも厳しい。よほどのマゾでないと指し切れません。
 ただ、落ち着いてみるとこの局面で先手は二歩損で歩切れ。チンタラしてると4三の歩も取られてジワジワ体勢整えられそうで、足を止めてもいられません。とはいえ歩がないので小細工も利かず、どうしたもんか。なんというか先手も後手も持ちなくない局面です。行方は飛車を3四の銀と刺し違えて強引に攻めていきましたが。

 あの右肩の頑固な凝りがほぐれて綺麗さっぱり解消。後手は玉薄くはされましたが、角が急所に飛び出して遊び駒ゼロ。駒割も金角交換と、捌けた上に駒得となれば十分やる気出ます。耐えてみるもんです。
 ここから終盤も1手30秒で指すにはあまりに難解な展開となりましたが、行方が頑強な受けで谷川の攻めを凌いで一手勝ち。見応えある好勝負でした。