棋は喧嘩なり

 W杯の決勝トーナメントは激戦が続いてますが、竜王戦の決勝トーナメントも始まりました。

▲藤森哲也-△高見泰地…▲藤森勝ち

 開幕カードは6組優勝・藤森哲也vs5組優勝・高見泰地。プロ入り同期の2人の対戦は、横歩取りの青野流へ。通常の横歩取りだと、先手は一歩得する代わりに飛車を立て直すのに手数を費やす=後手は手得して主導権握る、という構図なわけですが。青野流は一歩得した上に飛車を立て直さずに踏ん張る=手得を許さないという、横歩取りという戦法の根本に挑戦した指し方。プロでも結構指されてますが、これ実はパックマンとか角頭歩レベルに挑発的な作戦だと思います。後手としたら手得させてくれるっていうから横歩取らせたのに話が違うじゃねえかとブチ切れざるをえない。先手の飛車の位置が不安定なこともあって、最初からクライマックスな殴り合いになっていきます。

 この局面、取れる飛車を取らず、取りになってる金を逃げずに角取りに歩を叩いた場面。△2三同金と取られてさらに飛車取りにもなるわけで、もうわけがわかりません。これが31手目なんですから恐ろしい将棋。ここからさらに先手がズバッと飛車を切れば、後手も負けじと飛車をタダで押し売りするという男気ジャンケンな世界が繰り広げられますが、高見の読みの死角をついたダブル桂の飛び膝蹴りが強烈に突き刺さって藤森KO勝ち。青野流の3四で飛車が頑張るのには後手の桂の活用を牽制してるというメリットが一つあるわけですが、その桂の活用度の違いで勝つというのは気持ちいい。69手ですが内容の濃い一局でした。

  • MIM:▲2三歩(31手目)…↑の図でも取り上げた、飛車を取らず金を逃げずにぶん殴りにかかった一手。この一局で藤森は純粋な受けの手って3手くらいしか指してないんじゃないでしょうか。