一局に一手、山崎流

 昨日は女流王座の本戦も始まってましたが、まあ触れなくても別にいいかな…という内容だったのでスルーで。結果だけいえば、加藤桃子、西山朋香の奨励会組が女流を秒殺してました。

谷川浩司(0-0)-△山崎隆之(1-0)…△山崎勝ち

 横歩取り。先手が飛車引かずに▲5八玉と立つ青野流の出だしに対し、△8五飛と一つ引くのがやや珍しい手(メジャーなのは△2二銀、先日の竜王戦は△5二玉)。ただ、山崎は2年前の順位戦丸山忠久戦でも採用して勝ってますので、思いつきではないです。なお本局の棋譜コメで7-13で後手が大きく勝ち越してる形とか書いてありましたが、2年前の丸山戦のコメでは8-8のイーブンとのこと。この2年間で先手の勝ち星が減ってるという奇妙な話ですが、たぶんイーブンの方が正しい。そんなに勝ち越してるならみんな△8五飛指すでしょうから。
 しかし△8五飛は▲7七桂が飛車当たりになるというわかりやすいデメリットがあります。ゼロ手で桂跳ねさせてどうするつもりなんだろうと見てると、△4二玉と上がるのが控え室驚愕の「山崎流過ぎる」(@斎藤慎太郎)玉上がり。先手が▲6八玉と囲うのはよくありますが、横歩を取られてる後手がこう玉上がるのはそう見ません。まず3三角・4二玉という形が気持ち悪すぎてゲロ出ちゃいます。相手の攻めに近い、角金銀が壁形、3四桂でいきなり王手掛かる。初心者が指したなら、ダメなところを指折り数え上げられながら説教されます。一手で5三の地点をケアしつつ、7〜8筋の攻めからも遠ざかる、普通の手ですよと本人は言うかもしれませんけど。「普通」はもうちょっと自陣のケアに手数かけますから。一手で済まそうとかズボラなこと思いません。
 しかし、これを押し通すのが山崎流が山崎流たるゆえん。というか、こういう「これぞ山崎流」というような手が飛び出した将棋の山崎はたいがい負けないという印象あります。やっぱり気分が乗るからでしょうか。本局も攻め駒は次々急所に突き刺さり、自玉は気づいたら逃げ道まで確保して盤石という会心の指し回しで山崎二連勝。

  • MIM:△4二玉(22手目)…先手の飛車が3四にいるところで4二に玉上がろうと思う神経が信じられない(褒め言葉)。