雁木の質草

広瀬章人(1-0)…△行方尚史(1-0)…△行方勝ち

 NHK振り飛車穴熊の講座を開いていながら、自分では一向に振り飛車指す気配すらない広瀬。本局も居飛車を採用してNHK関係者の舌打ちが聞こえてきましたが、相矢倉模様の出だしから穴熊への組み換えを披露。やはり広瀬が穴熊指すとワクワクします。対して行方も矢倉ではなく雁木に組んで右四間+三手角の好形に。相矢倉で早めに▲5七銀と上がってきた場合、雁木に組むのが有力との棋譜コメでの解説。はじめて知りました。私も以前は雁木愛用してたんですが、そのわりに何も知りません。相手の布陣とか関係なくなんでもかんでも雁木にしてただけなので。
 しかし穴熊vs雁木では、堅さこそが正義の現代将棋では雁木勝てる気しません。せめて玉を3一、できれば2二まで収めてから仕掛けたいところだと思うんですが、行方は4一のままで敢然と△6五歩の仕掛けを敢行。角をぶった切って穴熊の金銀をもぎ取り、雁木がガンガン攻めこんでこりゃ圧勝かと見えましたが、強気に飛車をぶつけられて飛車交換を迫られてみると急に不安が出てくるのが雁木の悲しいところ。穴熊の金も上ずってるし、先手で飛車下ろせるしで雁木悪いはずはないと思いたいんですが、なにせ玉の脇がスースーのノースリーブなのが涼しすぎる。いつでも飛車を王手で打たれてしまうので、玉が質に入っちゃってる状態。そのせいで王手○○取りで攻め駒を抜かれる危険あるし、合駒を使わされる(金を引いて受けるのは薄すぎるし、玉上がるのは桂馬取られながら退路塞がれるのが厳しい)しで、ガンガン攻めてたつもりが腰砕けになりやすいのです。
 本局では広瀬はさっさと飛車打って王手掛けたんですが、これが手順に相手を固めさせ、かつ王手○○取りの含みをなくしてイマイチだった様子。それでも金を囮に攻めを遅らせつつ迫ったんですが、横からの攻めだけで寄せようと思うと、ちょろい人質に思えた4一の雁木玉が3一→2二の夜逃げルートがあって思いのほか遠い。やむなく受けに回りましたが、金金銀桂と持たれた状態で受けても手遅れというもの。最後は鮮やかな歩頭桂を決めて行方勝ち。相穴熊での速度計算には絶対的な強さ見せる穴熊王子・広瀬ですが、あまり見慣れない雁木相手では計算狂うんでしょうか。そういえばNHK杯でも広瀬は森下卓の雁木にボコボコにされてましたし、雁木に苦手意識あったのかも。雁木が苦手なプロとかあんまり聞いたことないですけど。
 行方はこれで初戦の阿久津主税に続いて新A級相手に連勝。かつて初A級でボコボコにされて即B級送りにされた行方が、初A級の若手をボコボコにする側に回ろうとは。